地域猫と猫ボランティアについて

町田動物愛護の会(*1)会員であり、自らも野良猫のTNR活動に携わられている斉藤倫先生。連載がスタートした「ノーにゃんこ ノーライフ~僕らの地域ねこ計画~」では地域猫をめぐる人間ドラマを描いていきたいという先生に、愛猫のこと、地域猫のこと、活動のことなどじっくりお伺いしました。
●プロフィール

斉藤倫
5月2日生まれ。愛知県出身、東京在住。
集英社『別冊マーガレット』でデビュー。
現在『Cookie』(集英社刊)にて「路地裏しっぽ診療所」連載中。

編集部
実際の保護活動の様子を教えてください。
斉藤先生
最初のTNRは近所で猫が増えてしまっているという噂を聞いて、放っておけなくて…。でもやっぱり、最初はみんなどうしていいか全然わからない。野良猫が増えないためには避妊手術をした方がいい、ということを知っていたとしても、実際やり方がわからない。ボランティアさんに聞いたりして、捕獲器借りてっていうところまで行き着けば、自力で何とかする人もいるかもしれない。けれど、自分の家の周りだったらまだしも人の家の敷地までは入れないです。公園でも人目に付くし、一人で捕獲する勇気、なかなか出せませんよね。
私は保護ボランティアの大先輩に相談してアドバイスをたくさんいただき、まずは周辺の調査から始めました。写真撮ったりして、どこら辺に猫がどのくらいいるのか、どういうことが大変なのか。結果、その周辺の猫たちはとある古いお家の敷地内に住みついているということが分かったんです。ということは、そのお宅に捕獲器を置くのが一番なので、了解を取らなきゃいけない。協力させていただけませんかって挨拶に行ったんです。最初は不審がられましたけどね。
でもご主人も猫が増えていることに関しては心配にはなっていたみたいで、保健所から捕獲器を一台借りて、TNRをし始めたところだったようです。1匹だけTNRしたって言っていたのですが、1匹ずつやるのはやはり大変な話で…。相談させていただいて、複数頭一気にやる方向で場所の出入りを許可してもらったんです。そのあとは、近くの交番にTNRの旨を挨拶に行きました。捕獲する日を決めたら、手術の予約を取って先輩ボランティアさんに捕獲器を借りて、各所に予定表を書いて出しました。
初めてのTNR当日は、先輩ボランティアさんもかけつけてくださって、他にも友人が手伝ってくれて心強かったです。一人じゃとてもできなかった。結局、1年半くらいに渡り何度も捕獲器をかけ、20匹以上をTNRしました。
TNR時の捕獲器の準備

TNR時の捕獲器の準備

編集部
保護する時に気を付けたことはなんですか?
斉藤先生
先輩ボランティアさんに教えていただいたことですが、捕獲は絶対一人でやらず必ず二人で行うこと。一人ではトラブルがあった時に対処しにくいので。実際、猫嫌いの人にどなられたり、捕獲器を蹴られたりなどのトラブルもあるみたいです。
あと季節にもよりますが、夜の方が猫が出てくるので、作業は夕方から夜にかけてか朝方になります。だからといって捕獲器を置きっぱなしは絶対にダメ、なるべく目を離さないようにすることです。持ち去りや、あと猫がかわいそうって勝手に出しちゃう人もいるみたいです。自分の家の庭でやるならいいですが、外の場合は気を付けてほしいですね。
猫捕獲後は布を被せると落ち着きます

猫捕獲後は布を被せると落ち着きます

編集部
警察に連絡しておいたのはよかったですね。
斉藤先生
そうですね。人間同士のトラブルがあった時には、自力ではなかなか解決できないですよね。大きな作業をするのであれば、人目に付くし言っておいた方がいいかなと思いましたし、それによって安心感はありました。
編集部
猫ボランティアは志が高くないと無理でしょうか?
斉藤先生
お金もかかりますしね。ただ最近では自治体によっては、野良猫にも不妊手術の助成金が出るところもありますし、地域猫活動を登録すると不妊手術代が協力動物病院で無料になるという制度があるところもあります。私は登録していないのですが、野良猫の手術を飼い猫と比べたら安い金額で、良心的にやってくれる病院があるので、そこにお願いしています。これからそういった獣医さんがどんどん増えるといいなと思います。
最初のTNRで保護した仔猫兄弟。兄弟揃って貰われて里親さん宅で幸せにしてます。

最初のTNRで保護した仔猫兄弟。兄弟揃って貰われて里親さん宅で幸せにしてます。

編集部
最後に「ノーにゃんこ ノーライフ~僕らの地域ねこ計画~」について聞かせてください。
斉藤先生

難しい問題もある地域猫ですが、猫によって人が変わっていく、猫をきっかけに人同士が繋がっていくというお話を描きたいと思っています。地域猫についても、「最近ではだいぶ知られているだろうな」なんて思うのは知っている人の間だけであって、興味のない人にはほとんど知られていない。この漫画にしても、知っている人が「そうだよね、そうだよね」って読むのはもちろんありなんですけれど、それ以上に知らない人に動物たちのことを知ってほしい、動物たちによって人が動かされるということを知ってほしいんです。そのためには、作品としてドラマとして面白くないとダメだと思うんです。
読者のみなさんには、この作品を通じて少しでも野良猫に興味を持っていただけたら嬉しいです。何もできないと思わず、少しでも動き出したら何かできるかも、一人一人のちょっとした行動が猫1匹の猫生を変えるかもしれない、と考えるきっかけになればいいなと思っています。
そして、何も知らなくて何もできない状態だった内気な主人公が、いろんなことを知って少しずつがんばっていく、その変化にご注目いただけたらと思います。のんびりゆっくりのペースでの連載ですが、どうぞよろしくお願いいたします。

こちらもTNRで保護した3兄妹。暴れん坊でしたがみんないいお家で幸せにしてます。

こちらもTNRで保護した3兄妹。暴れん坊でしたがみんないいお家で幸せにしてます。

編集部
皆さん、ぜひ今後の作品展開にもご注目下さいね。
斉藤先生、ありがとうございました。