画人文人 よんじょう
南仏コートダジュール在住の日本人。藍の万年筆で描かれる独自の絵は不思議な魅力を放つ。個展で展示される100点ほどの絵はほぼ完売。アメブロのヨーロッパ部門で有名なブロガーでもある。
<南仏ネコ絵巻>ではフランスのネコにまつわるグッズやよもやま話をイラストとともに紹介します。
「フランス絵巻」

今回は、フランス版ネコグッズのご紹介。1

“Kawaii“は日本にありき、というお話は、ネコエッセー第三話に書きました。
もちろん、デザイナーによっては、仏国にも可愛いモノはあります。

このお皿は、店の棚に1つだけ残っていたもの。このネコと目があった瞬間、『買え』と(ネコに)言われ、無視できなかったのです。

でも、これ、プラスチック製なんで、何に使っていいものか?実用性に欠けている(ほんなら買いなっ)。
日本人にとって、実用性がビミョーなグッズといえば、フランスのコレ↓
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お皿を拭くフキンです。

仏国では私もこれを常用しておりますが、日本宛のお土産にすると、『可愛い~。で、何に使うの?』といわれるんですよね。
仏国のフキンは、このサイズ~50cm×70cm~が“スタンダード”。
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日本では、“帯に短し、タスキに長し”のサイズ。
フキンにしては長すぎて、ランチョンマットにしては広すぎる。テーブルクロスにするには短く、皿を拭くには薄い。

というわけで、柄が可愛くても、“チョット、もてあますシロモノ”ですよね、日本では。
と、わかっていながら、よくお土産にしています…。

ちなみに、仏国は空気が乾燥している為、この薄い生地がベチョベチョになっても、スグに乾きます。
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(↑我が家の食器洗剤コレクション。数種類を常備して、順繰りに香りと色を変えている。これで、皿洗いもサラに楽し! 皿を洗ってるのは配偶者だとしても…)。

ところで。日本では、テーブルを拭くフキン“台拭き”と、皿を拭くフキンは“別々”に分けますが、フランスには、台拭きというものが無い。
なぜなら、“スポンジ“がオールインワンのお役目果たしているから。

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日本人が、仏家庭で最初にカルチャーショックを受けるのもスポンジ。仏人は、食器洗いに使ったスポンジを、そのまま(=同じスポンジで)テーブルを拭き、床にこぼれたワインや食べこぼしも、その(同じ)スポンジで拭き取る。

私が、初めてその光景をみたのは、ニースの語学学校時代。
ホームステイ先の宿主~当時70歳前後のマダム~が、食事のあと、皿を洗い、そのスポンジで、流れ作業の如く、食卓(テーブル)を拭いていた。
当初は、このマダムが特別に“合理的な人”なんだろうと思っておりましたが、仏国において特別な人は、スポンジを台拭きにしない私のほうなのだ、と気づくのに時間はかからなかった。仏家庭の、およそ10割が、そうしているのでアル。

ゆえにスポンジは、皿を洗った後は“ギュっと、硬く絞っておくこと”も仏的常識。仏国の流し台のスポンジは、軽く、ホボ乾いている状態がフツー、なのであります。

一旦、この習慣に慣れると、日本で皿を洗う際、流し台のスポンジを手にした途端、ベチョっと重く、水分をたっぷり含んだままになっていることに『あ』と、意識がいきます。
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そして、スポンジを台拭きにしてしまう自分に苦笑する。この“ベチョベチョ”カルチャーは、“床掃除”においては、日本と逆になります。

日本=『雑巾は硬く絞ってから拭く』
フランス=『雑巾はしっかり濡らしてから拭く』

土足文化のせいもありますけど、仏国における拭き掃除は、床がベチョベチョになるくらいじゃないと“効き目がない”(=汚れが落ちない)という刷り込みになっているのです。(実際にそうかもしれません)。

そして、拭いた直後に床を歩く(踏む)というジェスチャーは、きわめて、常識知らずの行為とされるのでアール(床が完全に乾くまで待機する)。
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ところで。
食器を洗ったスポンジでテーブルや床を拭く習慣は、清潔水準の高い日本人にとっては“プチ衝撃”になります。

そういう時は、自分こそ“スポンジ”(=“四角四面”)かも?、と疑ってみることで世界平和、人類皆兄弟、に繋がります。

ニンゲンの柔軟性は、いままでの習慣と常識を覆される時に鍛えられます。筋トレの如く、何度も、プチ衝撃に直面することで、狭窄していた視野が、やむを得ず広げられていくのです。

異文化に抵抗して、力み続けると、負荷がかかって、自分が潰れます。自分の頭のほうを、ちょっくら崩してみることで、寛容筋がゴムのように伸縮自在になり、スポンジの如く、一旦すべてを吸収して、排出(輩出)すればトレビア~ン。
以上、今月は、“ネコエッセー”になってないよね~、
と思いきや、“画像がすべてネコ”になってますのニャっ!
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次回は、“フランスの水”~石灰水~について、お話を続けます。

PS.
<石灰水がテーマになっている画>↓(2016年版ヨン画)
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