画人文人 よんじょう
南仏コートダジュール在住の日本人。藍の万年筆で描かれる独自の絵は不思議な魅力を放つ。個展で展示される100点ほどの絵はほぼ完売。アメブロのヨーロッパ部門で有名なブロガーでもある。
<南仏ネコ絵巻>ではフランスのネコにまつわるグッズやよもやま話をイラストとともに紹介します。
「フランス絵巻」

日本帰国中に、仏国ネタを書くというのは、実は不自然な話なんですよね。
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日々、目の前で繰り広げられている生活のことを“日常”と呼ぶからです。つまり、仏国を離れると、仏国で起こっていることは目には見え無い=感覚的には”無いのと同じ“になるんですわ。

毎日、我々が何の疑問もなく日本語を発している間に、何の疑問もなく仏語を喋っている国が同時に存在していて、それぞれの日常が、世界が、回っていることがフシギですよ。

ロンドンやパリのテロで誰かが死んでも、スーパーで広告の品を買い、割引券の達成感に浸る姉の日常は変わらず、仏人(現地配偶者)の顔をしばらく見てない妹(私)は、“配偶者は実在してたっけ?”という謎と共存しています。

そこが結論かっ。

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逆に、日本にいながらにして、「欧米では」のタトエ話をしたいタチの人もおりますね。訊かれてもないのに海外生活や海外旅行を語るのは、そこに本人の優位性が潜んでいるからでしょうけど、どの国に住んでも、同じ量の快と不快があるのが世のツネであります。

日本に住んで海外を美化するのも、海外に住んで日本を美化するのも、同じ国のムジナ。どの国に誰と住んでも、ユートピアは自分の中にあります。

何の話やねん。

そう、今月のお話は“フランスの水”のお話でしたね。
フランスの水道水はもちろん飲めますが、日本の水と決定的に違うのは、石灰を多量に含んでいること。

たとえば、仏国で、コップを洗って自然乾燥すると、コップの表面に白濁(シミ)が付着します。綺麗に洗ったハズのコップが、なぜ汚れてンの!?と、最初は面食らいますが、石灰のシワザ、なんですね。

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石灰分を多く含んだ水は、乾くと(蒸発すると)石灰の結晶が残ります。衣類は、洗濯しているうちに、グレーがかってきます。繊維の間に石灰が残留するんですね。

清潔レベルでは綺麗になってるのに、視覚レベルで黒ずんでいく現象は、1枚の衣類から、不毛な国際感覚を強いられている気分になります。
湯沸しポット等は、ポット内部が白濁し、底に卵の殻を砕いたような結晶(石灰)が溜ることもあります。

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“専用クリーナー”(主成分はクエン酸)で定期的にポット洗浄します(クエン酸の小袋が、コーヒーペーパーを買うと同梱されているものもある)。

仏国でウォシュレットを発売しがたいのも、値段以前に、石灰の課題があるからでしょう。噴射ノズルが石灰(結晶)でつまってしまうんで、お尻(おケツ)を洗う前に、ノズルのジェット洗浄が先ケツになりますもんね。

ヨーロッパの洗面台や台所の蛇口(金属部分)が曇っているのも、石灰が原因。曇りを取ってピカっとさせるには、脱石灰の専用洗剤や、酢を使います。

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(↑脱石灰の専用洗剤。ファブリーズのトレビア~ンな香りとコラボ型も発売中↑)

こういう洗剤を使わずにピカピカを維持したい場合は、水道水を使うたびに、水滴を綺麗に拭き取っておくことが肝要。水滴=石灰水なので、水滴を残さない事=白濁を残さない対策になります。

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その昔、ニースのホームステイ先の風呂場には、豪華なバスタブがありました。なのに<バスタブ使用禁止。シャワーのみ可>という注意書きが掲げられていた。

当時、日本感覚だった私は、「ケチな宿主め」と思いましたが(それもアタッていたが)、バスタブ使用禁止の理由は、2つあったのです。
※宿主は当時60代後半のマダム。離婚後、何十年も1人暮らし。ダミ声が特徴。

1つめの理由
一般の仏国家庭では、タンクで沸かせるお湯が1日一定量のため、1人がバスタブにお湯を溜めてしまうと、同居者全員にお湯がいきわたらない。
お風呂のみならず、台所で皿を洗うにもお湯が使えなくなります。

2つめの理由
バスタブにお湯を張ると、“石灰でバスタブが汚れる”から。
つるっとした白いホーロも、石灰水のせいで表面がザラついて、ツヤが消えてしまうのです。

しかし、バスタブを汚さないために、人間が遠慮しながら風呂に入るのは、フェラーリにカバーをかけて運転しろといわれてる気がしますよ。
フェラーリ維持のためマダムからの“風呂ルール”は以下の通り。
<シャワーのあとは必ず、バスタブ内に飛び散った水滴を拭き取ること>

このルールを、マダムは実践つきで説明していた。

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(浴槽にかけてあるミニタオルを手にとり、浴槽内を拭き取るデモ)
この家のバスタブには、年中、水滴拭き取り専用タオルがかけてあるわけだが、このタオル、いつも湿ったまま洗わないんで、雑巾臭くなっていた。

日本人にしてみれば「水滴以前にタオルを洗えや!」ですよね。

入浴で清潔になった直後に、臭い雑巾を平気で触れる感覚のほうがワカリマセンが、ニンゲンは、自分の脳内のテーマ以外のことには鈍感になるんですね。
マダムの脳内が水滴(=視覚)に囚われている間は、嗅覚(=雑巾臭)は機能しないのであります。
ところで、このマダム、「英語はオテノモノ」と豪語していた。
多くの日本人は、外国人から「英語できますか?」と問われた際、反射的に「a little」と答えたりして、できないほうをアピールしますよね。

本当はレベルが高い人でも、語学に長けていることを表に出さないのが日本人性。
アピールすればするほどバカにみえてしまうというお国柄と、アピールしないとバカにみえるお国柄の差もありますが、仏人の場合、“ディスイズアペン!”の荒井注レベルでも、「英語がしゃべれる」と堂々と言う人がよくおります。

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マダムは自分の流暢な英語を披露するのに「シャは、カット」という一例を発した。

何ゆーとん?と、My脳内でヒットする英語を検索していたら、マダム曰く『Chat(猫)は、英語でCat(カット)でしょ!』と。

Catの発音がカットですねん。
フランス人の英語がわかりにくいといわれる原点、ココにあり。

以上、今回もカットなしで、お約束のキャットで強引に〆ておきます…。

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