保護猫たちのために何かしたいけれど、どうしたらいいかわからない人は多くいると思います。今回はお店を利用することで保護猫の支援につながるという<保護猫シェルター+飲食店+宿泊>の3つの施設を合わせ持つ珍しい形態の「ホステルねこ蔵」さんを、漫画家の福田素子先生が取材して下さいました。

「ホステルねこ蔵」レポート(前編)はコチラから

「ホステルねこ蔵」のシェルターにいる子たちはみんな「動物愛護センター」から救い出された猫たちです。「今助けなければ数時間後には消えてしまう命」そんなギリギリな状況から保護されました。

それはお母さん猫と生まれたばかりの仔猫が親子で捕獲され持ち込まれたり、大きくなったらかわいくなくなったからと飼育放棄された子、飼い主さんが亡くなって引き取る人がいなくて遺族の方に連れて来られた子など…どの猫も人間の都合でセンターに収容され命を奪われそうになっていた子たち。

けれど「ホステルねこ蔵」を訪れた人は、そこにいる猫たちがそんな辛い過去を背負っているとは誰も想像できないのではないかと思うのです。

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開放的なシェルター内でのびのびと過ごす猫たち ☆

それはボランティアさんの愛情の賜物。
保護された猫たちはボランティアさんの手厚いケアでゆっくりと心の傷を癒やして「ここは安心できる場所だ」と思うようになるのです。

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かくれんぼや上下運動の好きな猫のことを考えて作られています ☆

もちろん中には人見知りの子もいます。引っ込み思案な子も。
でも元気に走り回りボランティアさんと遊ぶ子や、ゆっくりとおヒザに乗ってくるおヒザ大好きな子、はしゃぐ仔猫たちをじっと見ながらあくびをして寝る大人猫など、その空間でみんなが安心して過ごしている様子は、訪れた人たちも幸せにしてくれるなごやかな風景…。

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たくさん食べて元気に育ってね ☆

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肉球トンネルも上手に使いこなしています ☆

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安心しきった寝顔たちに、見る者の心も癒されます

ところで訪ねて気がつくのですが、ここのシェルターは仔猫が多くいます。
動物愛護センターに持ち込まれる中には仔猫たちが多いため、自然と保護することになるのも仔猫が多くなるのです。

乳飲み子でお母さん猫がいない仔猫たちはボランティアさんがお母さん代わりです。
こまめな授乳や排泄を促すお母さん猫の仕事を全部引き受けるのです。
大人猫よりも弱く体調の急変で救急病院に行くことも数え切れないほど。
このとても小さな時期の猫たちは、しっかりしてくるまで預かりボランティアさんたちの元で育ちます。その後ようやくシェルターデビュー。

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仲良し茶トラ3匹は、きょうだいかな?

そんなシェルターの中で日々起きるドラマは下手な小説よりも驚きと感動があると「ホステルねこ蔵」管理人の井上さん。
猫と人との出逢い…猫を救うはずの場所で猫に救われる人もいるのだといいます。

予約制のシェルター見学には何度か訪ねていますが、その度に猫たちの数やメンバーは変化しています。考えてみたら当然のことで、「本当のおうち」が見つかって引き取られて行った子がいれば、新しく保護された子もいるわけです。
それでも変わらない顔ぶれの猫たちがいます。
それはなかなか「運命の赤い糸」の先が見つからない子と、このシェルターのお世話猫。

お世話猫とは井上さんの飼い猫たちで、三毛の福ちゃんと夢ちゃん、ノルウェージャンフォレストキャットの太郎くん。

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ちょっと小心者な福ちゃん

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女番長(!?)の夢ちゃん。目力も強いですね!

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落ち着いた物腰、孤高の太郎くん

しかしお世話猫と言ってもシェルターに来た子たちをせっせと構うなどではなく、福ちゃんたちが井上さんはじめボランティアさんを信頼してゆったりと過ごすことで、新しく入った子たちに「ここは安心していいところだよ」と伝える…それがお世話猫の仕事のようです。

そして何度か訪問する度「こんにちは」と声をかけていた保護猫の月見ちゃん。
なかなか良縁が見つからない子だと聞いて驚きました。
仔猫が大好きで入ってきた仔猫の世話をする母性あふれる美人の月見ちゃんは、見目好し性格良しなのに…縁というのは不思議なものだなと思いました。

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仔猫のお守りをする面倒見のよい月見ちゃん

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大きな耳も魅力的です

「どの子もちゃんと本当のお家があるのよ」と言うのはオーナーの森さんと管理人の井上さん。「ゆっくりでもいい。きっと見つかるから。この子たちそれぞれを幸せにしてくれる本当のお家を見つけるまではここで安心して暮らしてもらうわ」と。

出逢った人と猫どちらも幸せになれるように「運命の赤い糸」を探して――。

「ホステルねこ蔵」では、通常の予約制シェルター見学以外にも出逢いの場をと、月に一度、定例の譲渡相談会も開かれていますので、猫を迎え入れたいと考えている方はぜひ参加いただけたらと思います。相談会にも予約が必要ですのでお忘れなく。

そして出逢いの場で引き取りたい子が見つかれば→里親希望の申し出→トライアル→正式譲渡となりますが、それは「この子ください」「はい、どうぞ」という簡単なやりとりなどではありません。
里親希望された方には飼育環境を詳しく聞かせていただいたり、ご自宅を訪問して、脱走防止対策ができるか確認させていただいたり、その間にも里親希望の方にはシェルターに面会に来ていただいたりと、何度も行き来があったりします。
その過程を「もらってやるんだから、そんな面倒なことを」とか「うるさいことを言う」と言われる方もいるようですが、保護猫ボランティアさんたちが見てきた多くの悲しい出来事は…

信じて委ねた先で捨てられた
脱走防止対策をしないで逃げられ行方不明になった
虐待を受けていた…

ボランティアさんたちは悲しみと怒りと「もしかしたら防げたのではないか」という後悔「もう二度とこんな目に遭う子を出したくない」という思いから譲渡に対して慎重過ぎるほどに慎重な対応を取っているのです。

ですから、譲渡までのプロセスを多いと感じる方がいるかもしれませんが、それはその先にある「人と猫どちらも幸せ」になるため。
ずっと続く大きな幸せのために、少しだけおつきあいください。

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どの子にも素敵な良縁が見つかりますように

最後に「里親にはなれないけど、猫たちのためになにかしたい」と思う多くの猫好きの方、予約制のシェルター見学で「ホステルねこ蔵」の保護猫たちに会いに来てボランティアさんの補助役を体験したり、併設の飲食店で食事を楽しんだり、ホステルでの宿泊などご利用ください。その売上の一部がシェルターの保護猫たちを守り幸せにする支援につながります。

(文・写真/福田素子 ☆印写真提供/ホステルねこ蔵)

●福田素子オフィシャルHP【もとちゃん.ネット】⇒ http://motochan.net

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「保護猫シェルター付きホステルねこ蔵」
住所・812-0044 福岡県 福岡市博多区千代4-7-86
予約はホームページとブッキングドットコムさんからできます。

●ねこ蔵は11月1日より、リニューアルしました。
<カフェ茶蔵(さくら)>
月曜~土曜/11:30~17:00
日曜/定休日
<日本酒バー夜茶蔵(よざくら)>
月曜~土曜/18:00~翌3:00
日曜・祝日/定休日

ホームページ⇒ https://www.nekokura.co.jp
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twitter⇒ https://twitter.com/NEKOKURA5

(レポートの内容は、2017年9月現在のものです)