南仏コートダジュール在住の日本人。藍の万年筆で描かれる独自の絵は不思議な魅力を放つ。個展で展示される100点ほどの絵はほぼ完売。アメブロのヨーロッパ部門で有名なブロガーでもある。
<南仏ネコ絵巻>ではフランスの猫にまつわるグッズやよもやま話をイラストとともに紹介します。
「フランス絵巻」
ニースの路上を歩いていたら、見知らぬマンションの玄関から猫がピョンと現れ、
目が合うと「ニャー」と言い、ソバに寄ってきて、ずっとスリスリ、スリスリスリ。
ワタシに猫力がついたんでしょうね、猫エッセーのおかげで……。
さて。お酒のラベルで、頻繁に使われるアニマルもダントツで猫。
猫と酒がよく似合うのは、人間が酒の肴を“チビチビやる”体（テイ）と、猫の飲食の仕方が似てるからですかね。
夏目漱石の作中の“吾輩は猫“は、酒樽で溺死しとりましたが、ホロ酔いでゴキゲンさんのまま、人生（猫生）が閉じていくのは幸せな最期ですニャ。
さて、仏国を代表するリキュールの１つに、薬草系の銘酒“シャルトリューズ”があります。
1605年、仏国のグランド・シャルトリューズ修道院に秘法として伝えられ、“リキュールの女王”と呼ばれるこの方を、ニースの女王（自称）は去年まで知りませんでした。
現在も、この酒のレシピを知る者は、シャルトリューズ修道院の修道士3人のみラシイ。
猫種にも“シャルトリュー“というのがおりますが、この酒に由来するという説があります。
シャルトリューは、ロシアンブルー、コラットと並び、“ブルーの御三家”と称されるフランス原産の猫。
元・仏国大統領シャルル・ド・ゴールの愛猫としても有名で、“フランスの宝”と呼ばれているそうです（初めて聞いたが）。
そもそも、カルトジオ会の修道士のことを仏語で“シャルトリュー”というそうで、鶏（猫）が先か、卵（酒）が先か、みたいなことなんでしょうけどね。
左がカルトジオ修道会のマーク
修道士や神父は、結婚も禁止、恋愛もタブーです。何がおもしろうて生きてんの？ってことですけど、その世界に入れば、禁欲生活を遂げることこそが“快感”になるんでしょうね。
ってことは、禁欲という快感もタブーちゃうん？
というのは禅の世界になりますけど、東洋思想は、西洋と違って制限がなくていいですな。
ところで。知人の仏人が住む村の神父（当時82歳）が、教会への寄付金を毎年“少しずつ”着服していたという実話がありました。
着服のことを、“ネコ”ババ、という、ということで、今回はこのお話です……。
この神父さんが、何十年もかけてネコババした総額は500,000ユーロ（≒6500万円）。
小さい村ゆえ、教会といえばソコ、神父といえばソノ人、ってことで、地元民らは当然「ええーっ!! まさか、あの神父さんが!!」と大ショック。
ショックというのは、人物像とのギャップに比例しますんで、神父に裏切られたともなると、アイデンティティーが根こそぎ崩壊するような空虚に襲われたことでしょう。
で、この手の事件には必ず、“聖職でありながら”、という枕詞がつきますけど、聖職だからこそおかしくなるんですよ。
すべてのニンゲンが持っている闇を、“職業柄“抹消したら、闇は“病み“に変形します。
逃げ場がなくなった闇は、歪んだ形で停留し、限界値に達した時に発症する花粉症、ですわ。
花粉症を例にあげるまでもなく、小さな容器に粘土を無理やり閉じ込め、上から圧をかければ、粘土は歪み、箱のスキマから外にはみ出すのが極めて自然のカタチ。
神父さんは365日、何十年間も清廉な自分を維持しているうちに、どこかで自分を汚したい衝動に駆られたんじゃないですかね。
人間に備わっている欲望をシャットアウトした分、魂レベルで無意識にバランスを取っていた、ということになります。
物品欲しさのネコババではなく、発作的に闇を自分の中に取り戻していたんでしょうね。
ダイエット中の人が、とつぜん、ドカ食いしてしまう衝動の如く、発作的に闇にむさぼりついて欠乏を埋めていたといいますか。
最終的に、神父さんは、警察に捕まった後、ネコババで積立てたお金を全額、教会に納めたそうなんで、理想的な“罪立て”預金になりましたけどね。
お酒を飲むと、普段、表に出てない人格が出てきます。その埋もれているほうも本性。
神父さんも、時々シャルトリューズを飲んで、埋もれている自分を小出しに開放しておけば精神的にバランスが取れていたかもしれませんね。
では、猫のシャルトリューにシャルトリューズを飲ませると？
シャルトリオーズ（猫三匹）に見えたりして～。
