ちよだ猫まつり2019
『ノーにゃんこ ノーライフ~僕らの地域ねこ計画~』第2巻発売記念 斉藤倫先生×横槍メンゴ先生トークショー&サイン会報告

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2019年2月16日と17日、今年も東京都千代田区役所で『ちよだ猫まつり』が開催されました。毎年2月に行われる猫のイベントとしては最大級として知られ、すっかり千代田区のイベントの顔としても定着した感があります。
行政である千代田区とボランティア団体である一般社団法人ちよだニャンとなる会の共催も息がぴったりで平年以上の来場者数があったようです。
衰えを知らない猫ブームに踊らされることなく、千代田区は【殺処分ゼロ】を今年も更新し、8年継続となり更なる飛躍が期待される保護猫活動のモデル地域でもあります。
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昨年のトークショーにも出演された斉藤倫先生は、ご自身でも保護猫活動の経験を持ち、その経験を活かしてWEB漫画サイト“ねこねこ横丁”にて『ノーにゃんこ ノーライフ~僕らの地域ねこ計画~』を連載中。最新第2巻が発売されたばかりの斉藤倫先生と、猫と人が幸せに暮らしていくためのWEBマガジンneco-neccoでの取材記事が縁で斉藤先生と繋がった同じく漫画家の横槍メンゴ先生とのトークショーが今回実現しました。

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※(『ノーにゃんこ ノーライフ~僕らの地域ねこ計画~』第2巻の帯の推薦文は横槍メンゴ先生)

 

斉藤倫先生(以下、斉藤)『ノーにゃんこ ノーライフ~僕らの地域ねこ計画~』は野良猫や地域猫をテーマにした作品で、こうした猫たちとの付き合い方、それによって繋がる人と人との社会の繋がりを描いています。

横槍メンゴ先生(以下、横槍)斉藤先生の漫画は、すごくわかりやすい! 地域猫を知らない人にもわかるように描かれているのに説明的ではなくて、ちゃんと漫画のストーリーとして成り立っていて、地域猫の入門に適した本だと思っています。

斉藤 ありがとうございます。専門家が読む本ではないので、猫を好きな人でも、嫌いな人でも、飼っている人でもそうでない人でも、小さいお子様から大人の方まで読めるようにと思って、あまり専門的になりすぎないように描いてるつもりです。

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斉藤 ちよだニャンとなる会さんは野良猫を保護して一般家庭の猫にしようという譲渡活動もしています。野良猫ってさっと逃げてしまったり、何を考えてるかわからないイメージもあるんですけど、家の中に迎えられていったん人に馴れてしまうと、本当に昔のそっけない感じから変わっていくんですよね。

横槍 地域猫、つまり野良猫は、一度人間と一緒に暮らしていて外にリリースされてしまうと生き延びられないことが多い。ウチで飼っている歌子という猫を保護したシェルターさんはそういうことを知っていて、明らかに人に飼われていたと思われる猫から優先的に保護するようにしているといいます。

斉藤 横槍さんのところは猫2匹、るったん(ルーシー)と歌子ですよね? どういう経緯で迎えられたんですか?

横槍 るったんは福島で被災したお母さん猫が産んだ子供です。保健所に入っていてあと一日で殺処分というところをシェルターの方が保護してくれました。
歌子は多頭飼育崩壊の現場で保護された子です。2匹とも違うところから来ていますがとても人懐っこくて仲良しです。

斉藤 そういうすごく懐っこい猫が外で暮らしていると可愛いけれど、逆にすごく危険があって、たまに問題になってる虐待や連れ去りとか…。

横槍 アメリカだとアニマルポリスっていう警察が動いてくれる仕組みがありますよね。日本だと兵庫県に電話の受付相談口があって「これって虐待じゃないのかな」というときに電話で相談できるんですけど。まだ日本では警察が直接動くような仕組みができていない。

斉藤 でも相談窓口ができたことで、ちょっと期待ですよね。

横槍 そうですね。ちょっとあるだけでも、すごい進歩だと思います。

斉藤 私はもし虐待に気づいたら警察には知らせると思うんですけど、猫のことだと警察の対応も…。

横槍 通報する側にも心情的なハードルがあって、動物のことだけど(警察で)いいのかな?という気持ちがあると思います。まだ、保護団体が動くことが多いですよね。先日、ワンちゃんが虐待されているんじゃないかという動画を高校生の子がtwitterにアップしていて、それを見た団体の方が広島まで保護しに行ってくれて。その時は、警察の方も動いてくれたんです。
SNSが動物保護に繋がったのは良い例だと思います。

斉藤 個人だとどうしていいかわからない場合でも、SNSで共有されてアドバイスが届くようになる。

横槍 犬や猫への虐待に対する刑罰も軽いと思いますし、私は個人的には早くアニマルポリスが設置されてほしいなと思ったんですよね。

斉藤 そうですね。海外のアニマルポリスだと、例えば多頭飼育崩壊とかでもすぐに対応ができますし、そういうことができる組織が日本にもあるといいですよね。
日本でもちょっとずつ環境が整いつつあるとは思います。

横槍 あと、まだ猫を室内の狭いところで一生飼うのはかわいそう、という価値観が残ってますよね。それは誤解もあって外の過酷な状況ではほとんどの子猫は冬を越えられない。猫って思ったより部屋の広さが必要じゃない動物で、高さの方が大事。

斉藤 猫は高いところに乗ったりするのが大好きですもんね。たとえば部屋の中でも家具などで高低差をつけてあげたり、キャットタワーを設置してあげたりすればいいんですよね。野良生活が長かった猫を保護すると、外に出たがったりする場合も多いと思いますが、そこは我慢してもらって家の中になれてもらう。
本当は外にいる猫たちをみんな保護してあげられたらいいと思うんだけど、今その数がものすごく多くて。

横槍 それに関して思うところがあります。保護猫活動をやってもどうせ…と諦めている人って動物愛護に興味がない人よりもくわしい人の方が多い気がします。問題の端っこに触れたときにあまりにも果てしなくて諦めちゃうっていうか。猫を全員救えないのであれば目を背けたい、というようなことが多い気がして。

斉藤 単独な場合、自分一人が活動したところで変わらないという想いがあるんですよね。でも、みんなを助けられるわけでないとしても、目の前にいる1匹を助けることはできるかな、って。

横槍 ほんとにちょっとしたところに募金するだけでも全然違う。自分の意識とキャパを少しずつ広げていくだけで、大きな変化になるんじゃないかな、と。

斉藤 もし自分で飼えないんだったら保護猫カフェもだいぶ増えてきているので、「自分は猫が飼えないから何もできないや」と諦めるんじゃなく、保護猫カフェに行ってお金を払ったり、お茶を一杯飲むだけでも活動の支援になるので是非行ってみていただきたいと思いますよね。

横槍 一人ひとりがちょっとずつ力を出せば大きな力になると思います。

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横槍 動物愛護の話や募金の話をしていると、「猫よりも人の方が先」ということを言われがちなんですけど、猫も子供も声を発せられない弱い立場の子の声が見捨てられるような社会の中で、子育てとかしたくないなって思ってしまうんですよね。

斉藤 たしかに寄付やボランティアをしていると猫のことじゃなくて、人間にボランティアしたほうがい良いと言われやすいですね。それも大切と思えるけど、目の前にいる可愛い動物たちのことを考えなくていいのかな?と思います。

横槍 現状を見て見ぬふりをする社会の方が、結局人にもよくないのでは、と私は思うんですよね。

斉藤 地域猫活動は、地域によっていろんなやり方がありますが、千代田区の地域猫活動は行政とボランティア団体との協力体制が強くて。もともとボランティアの方から働きかけたわけではなく、行政のほうからそういう猫の対策をしたいからボランティアを募集しますということで集めたんですよね。

横槍 行政内部に野良猫問題に関して理解のある方がいらっしゃったんですよね。殺処分0の実現もすごく早かったですよね。

斉藤 捕獲した猫の不妊・去勢手術が必要になったときも、行政からすすんで車を出してくれたりとか、本当に一緒にやってるんですよね。すごくいいモデル。ほかの地域でもぜひ参考にしてもらえたら。

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斉藤 漫画家は猫飼いが多いですね(笑)

横槍 周りの漫画家友達もみんな猫の多頭飼いですしね。多頭飼いの良い点はお出かけの罪悪感が減ることですね。

斉藤 まだ猫が1匹だったときは玄関で待っててくれたのに、2匹になったら出迎えはなくなって猫だけで固まってるようになりました。

横槍 猫を飼っててよく聞かれるのが「漫画を描いてるときに猫に邪魔されることはないんですか?」ですけど、多頭飼いで漫画原稿を手描きの斉藤さんは猫に邪魔されたりすることはありますか?

斉藤 やっぱり邪魔されますね。デスクに乗ってくるのでデスクの横に猫用のスペースを作っています。カラー原稿の時なんかはさすがに絵具とかを使うので猫を仕事部屋から追い出します(笑)。 横槍さんの場合はどうですか?

横槍 私は液晶タブレットを使っているのでそこまで困ることはないですが、タブレット自体が温かいので猫が乗っていたりします。純粋に眠ってる可愛い猫を放置するなんてできない!と思ってしまうのですが、この漫画家という仕事で猫を養っているので気持ちの上下が激しくなってしまったりします。

斉藤 猫と漫画家は相性がいいのかもしれませんね。

横槍 猫は散歩もいらないですし、漫画家の気質は猫と合うのかもしれません。まだまだ話し足りないです!

斉藤 また機会がありましたら是非お願いします!

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編集部(以下、編) 横槍メンゴ先生にお伺いします。斉藤倫先生の『ノーにゃんこ ノーライフ~僕らの地域ねこ計画~』で一番印象に残っているエピソードは?

横槍 どのエピソードも印象深く、リアルに起こっていることが丁寧に拾われています。特に三毛猫ボレロの産んだ子猫がカラスに襲われてしまう回(ライフ.9 コミックス第1巻収録)は何度見ても辛いですが、厳しい現状がそのまま描かれているなと感じます。私は『ノーにゃんこ ノーライフ~僕らの地域ねこ計画~』から斉藤先生の作品を知ったので、この作品の1話がまさに出会いだったのですが、とても引き込まれる1話ですし、ペットロスの辛さを知っている人に響く描写が散りばめられており、とても共感致しました。同時に、このテーマで説明臭くならず、漫画として読ませることができ、なおかつ物語としても魅力的に成立している作品が存在することに、とても感銘を受けました。

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%e3%83%a9%e3%82%a4%e3%83%95%ef%bc%99%e8%a6%8b%e9%96%8b%e3%81%8d『ノーにゃんこ ノーライフ~僕らの地域ねこ計画~』ライフ.9より

斉藤 ありがとうございます。ライフ.9 のカラスのシーンは、とても描きたくて……というか、描かなきゃいけないと思っていた大事なシーンです。現場を見たことがあるわけではありませんが、現実によく起こっていることだと聞きます。なので、きれい事にならないように慎重に(心を無にして⬅感情移入し過ぎると描けないので)描きました。過酷な野良猫の生活の中で、子猫はなかなか生きていけない厳しい現実がありますが、その子猫を産んで育て守るために母猫の方も命をかけているのだということも知ってほしいです。出産の日にたまたま大雨で命を落とした母子猫や、真夏日に水も飲めなく一緒に干からびて死んでしまった母子猫……そんなお話を猫ボランティアの方にお聞きしたこともあります。
そういった悲しいことが起こらないように、やはり最低でも不妊手術やTNRが必要だと思います。
主人公の蒼が「ペットロス」をどうやって乗り越えていくのか?というのも描きたいことのひとつですね。動物と関わると誰でも経験することだと思います。そして、野良猫やそれに関わる人たちに対して、私が普段から感じていることを詰め込んでいます。読んで考えるきっかけにしていただけたら嬉しいです。

 斉藤先生、横槍先生ありがとうございました。トークショーもお疲れ様でした。
『ノーにゃんこ ノーライフ~僕らの地域ねこ計画~』にもあるようにまさに1匹の猫によって世界が変わり、繋がったお二人の気持ちがよく伝わりました。

『ノーにゃんこ ノーライフ~僕らの地域ねこ計画~』は第3巻で完結予定です。

ねこねこ横丁で偶数月22日に最新話を更新中ですのでお見逃しなく!

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サイン会も大盛況でした!

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※コミックスにサインする斉藤倫先生。