福岡市内から車で約1時間。のどかな田園風景が広がる福岡県古賀市にある「Café Gatto(カフェ ガット)」さん。里親募集型保護猫と古民家カフェという新しいスタイルの提案で、クラウドファンディング「FAAVO」にて一部、資金を集め今年の4月にオープン。動物専門の行政書士でもあり、カフェ総支配人の服部薫さんにオープンのきっかけ、猫たちのことご自身のことなど伺いました。

保護猫が幸せになれる場所を。出会いの場を作りたい

大正時代に建てられた築90年の広々とした古民家(敷地面積224坪、建て床面積53坪)は、のんびりとした空気が流れ、まるで田舎のおばあちゃんの家に来たかのよう。猫も人もくつろげるよう猫スペースとカフェスペースを完全に分離、ランチやお茶だけを楽しむ方も猫と触れ合う方も満足できる作りになっています。

大きな一軒家はほっとする雰囲気

大きな一軒家はほっとする雰囲気

猫スペースでのんびりと過ごす25匹の猫たちほぼすべてが里親募集中。元々は野良だったり、保護されたり、飼い主さんの都合でどうしても飼えなくなったり、行き場のなくなった猫たち。「Café Gatto」はこの猫たちが新しい家族に出会う場として、服部さんをはじめスタッフのみなさんの手により作り上げられました。幼いころから猫好きだったものの、十数年前までは普通のいち猫飼いだったという服部さん。それがこのようなカフェを開くまでにはいろいろな葛藤があったそう。

服部さんと営業部長のみにおくん

服部さんと営業部長のみにおくん

「学生時代、1匹の野良猫に出会って、初めて殺処分の現実を知りました。自分にできることはないのか、なにができるのか悩みました。」
服部さんはペットを飼う人だけでなく、その家族、それ以外の人々の動物の命に対する意識を変えていかなければと、動物専門の行政書士としての仕事を始め「ペット信託」*を立ち上げました。そして、高齢でペットが飼えなくなった、自分が死んだあとのペットが心配、遺されたペットを飼う人がいないなど、相談を受けるうち、猫が新しい家族を見つけられる場所、里親募集型のカフェをやることを決意したそう。

「ペット信託」とは、ペットと財産をあらかじめ信頼できる人や団体に託し、飼い主が責任をもって飼えなくなってしまった際、その財産でペットが幸せな生涯を送れるよう契約を結び書面に残しておくもの。詳しくは→「FASA」

りんご組となし組の猫たち

けがや病気で療養中の猫も加えると30匹前後の保護猫が「Café Gatto」で暮らしています。幸せな出会いを待つ猫たちのため、好みや性格だけでなく、1匹1匹の体調の変化にも気づいてあげられるようスタッフの方々は気を配っています。
体調のすぐれない猫はカフェには出さずお休みし、さらに猫スペース内ではりんご組(猫エイズキャリア)となし組(猫エイズ、猫白血病のキャリアではない)とに分けられています。
「猫エイズは実は感染力が弱いといわれ、もちろん人にはうつりませんが、名前からの偏見や敬遠を払拭するため、ここでは可愛い呼び名をつけています。猫同士の感染も交尾や流血するほどの喧嘩をした場合に感染率が高くなるくらいで、グルーミングやトイレの共有ではほとんど感染しないんですよ」

rikuo↑店長のくりおくんもりんご組さん。風邪などには留意しています
neko2↑写真と名前とともに組も書かれています

猫たちの命に責任を持つために

現在、カフェでは猫ヨガ、猫写真教室、夜の猫カフェなど、多くの方に興味を持ってもらえるようさまざまなイベントが行われています。遠方からや常連のお客さんも増え、初めての里親さんも決まったそう。
ただ運営はそれほど楽なものではなく、まだまだ多くの応援が必要なのも事実。けれど、服部さんたちスタッフの方々の想いも軽いものではなく、ビジネスとしての仕組みを確立しようと奮闘されています。

↑数々の猫グッズ。作家さんのものやオリジナルも

↑ねこねこ横丁でもお馴染みの東京猫又グッズも
「私たちもすべての命を救うことはできません。でもこのカフェにいる猫たちの命と里親探しには責任を持っています。ただかわいそう、なにもできないから…、と思うのではなく、一人一人が自分のできる範囲でできることをやってもらえればと思います」

最後に、「こういった保護猫カフェを作ったことで猫を置いていってしまう人はいないんですか」との問いに、「知人にも心配されたんですが、今のところないんですよ」と答えた服部さん。けれどこのお話をした数日後、寒空の中、2匹の仔猫が門の前に置きざりにされるという悲しい出来事が起こりました。
「どんな理由があったとしても決して許されることではありません。多くの猫がいるから1、2匹増えても…と考えたのかもしれません。とんでもないです。この無責任な行為が今いる猫たちの幸せを壊す可能性もあることを知ってほしいです。二度とこのようなことがないことを祈るばかりです」
ただ可愛いだけではすまされない猫たちのお話を伺いましたが、取材中、お客さんの口から出る「癒される~」の言葉に思わず笑顔。お近くにお寄りの際はぜひ足を運んでみてください。

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保護猫のお話については、ねこねこ横丁でもマンガを掲載中。『ノーにゃんこ ノーライフ~僕らの地域ねこ計画~』

「Café Gatto」
〒811-3127福岡県古賀市新原526

営業時間 11:30~18:00
定休日:月曜・木曜
ランチ:金曜・土曜・日曜のみ

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