第六回『まんが ねこねこ横丁』取材モデルとして登場いただいたのは、下町名所の浅草雷門近く、貴重な建築物を修復活用されている「ギャラリー・エフ」です。人気観光地とあって多くの人々が行き交う町中、時を超えて受け継がれ縁を通じて人々が集う場所となっている素敵なお店について、そしてもちろん看板猫・すずのすけ君のお話についても伺ってきました。
Q.初めにお店についてIzumiさんにお聞きしました。
お店は1997年にオープンして20年、平屋の母屋から奥の古い土蔵へつながる形で、土蔵は関東大震災と東京大空襲を乗り越えた江戸建築の建物です。
Q.ギャラリーとカフェを一緒にやろうと思われたのはどうしてでしょうか?
もともと古くなった蔵を再生させるかどうかを話し合い、アートスペースとして利用し残そうと決めた時に、それだけでは成り立たせるのが難しいと考えてカフェとの併設の形となりました。
Q.ギャラリーではどんな催しをされているのでしょうか?
展覧会や音楽の演奏会、朗読会など様々なイベントを催しています。
薩摩琵琶や民族楽器、ジャズ、落語、絵画や写真展示まで幅広いジャンルで行っています。
Q.どんなお客様が多くいらっしゃいますか?
地方からの方も多いです。浅草という場所柄のため観光客の方が半分くらいでしょうか。外国の方も多いです。
猫を好きな方は圧倒的に多く猫から広がった人の輪ができています。
銀ちゃん(先代猫の銀次親分のこと)の存在があったからこそ繋がった方たちも常連としてよく通ってきてくれます。銀ちゃんが亡くなった時が急だったため、“いつか”より、日常の通える時・会える時に来て下さる方が増えました。
壁掛けにある手芸品のチャリティーコーナーでは、有志の方たちが作品(商品)を納めて下さっています。販売された売上の全額を原発事故の被災動物中心の給餌代として他、保護動物のシェルター運営やTNR活動を行う個人や団体に寄付させていただいています。
Q.カフェのおススメメニューをぜひ教えて下さい。
一番人気は“納豆とベーコンのクリームソーススパゲティ”。
ケーキなども含めて全てをお店で手作りしています。
Q.この仕事をされていて良かったことはありますか?
全てを猫が運んでくるという感じで、100%出会いから何でも猫でつながり合っているように思います。飼い猫は基本インドアな存在なのに、SNSやネットなどを通じて広がりができています。
Q.お店を始められてから忘れられない出来事はありますか?
銀ちゃんが突然亡くなり、ここで葬儀をしたことです。
先代の看板猫・銀ちゃんのお話は、Izumiさんの著書「銀次親分物語」(KADOKAWA)で愛情深く語られています。1匹の猫がどんなに大きな存在であったかが強く伝わってくる胸を打つフォトエッセイです。
それでは二代目を引き継いだ、看板猫のすずのすけ君についても教えて下さい。
Q.すずのすけ君との出会いは?
銀ちゃんが亡くなり半年、毎週のように被災地に取り残された動物たちの給餌や世話をするために福島・飯舘村に通う中、2014年6月25日の帰り道、午前2時に常磐道の路肩に座っているのを見つけ、そのままでは危ないと思い何とか車を止めて拾い上げ連れて帰りました。
Q.すずのすけ君という名前の由来はありますか?
里子に出そうと思いましたが、2日後くらいには飼うことに決めて「銀」と同じ金属で考えた時、上の「金」というわけにはいかないので同じ銀色の「錫(すず)」+「之介(のすけ)」に。
Q.ニ代目としてお店に出ることになったきっかけはありますか?
保護した時に右足を骨折しており2ヶ月安静にと言われ、自宅には連れ帰らず蔵の中に置いたケージで過ごしてもらいました。遊びたい盛りの子猫だったので時々出して遊ばせたり。カフェにも放してみると、銀ちゃんのお気に入りの場所(カフェ一番奥のイス「シルバーシート」、通行人の見える窓側の席、厨房カウンターの下側)を教えなくても好み、お客さんともフレンドリーに接することができたので、行動が落ち着くまでは見習いとしてスタートしました。
Q.すずのすけ君はどんな性格ですか?
いたずらをすることもあるので“ワル”と呼ばれることも(笑)。
人が好きで、人見知りをしなさ過ぎて心配な時もあります。ある意味怖いものナシとだ思います。猫は怖がりだとストレスがかかると思うので、それはきっと幸せなことだろうなと感じます。
初代の銀ちゃんは、とても落ち着いた大人な男という二枚目キャラで、すずはまた違った三枚目キャラ。そうしようと特別何かした訳では全くないのに、よくできているなと思います。
Q.お店ではどのように過ごすことが多いですか?
1階の店内から外への出てしまうことのないように2階で休んでいるのが基本で、おもてなしの際に1階でお仕事します。2階で眠っているだけではなく、時々動いて遊ばせるようにしないと夜に家で暴れてしまって、さくらちゃん(先住猫のお姉さん)に迷惑がかかることも…。
イベントがある時にはお客さんのお出迎えから接客おもてなし、本番中は静かに過ごし帰りのお見送りなどもよくしてくれます。
Q.すずのすけ君には苦手な人のタイプなどがありますか?
ナシ! 子どもも大丈夫です。猫が苦手とする小さな子でも、子どもには優しくしなくてはと思うのか、接する時には大人しくしてくれます。
Q.すずのすけ君のチャームポイントや可愛いところ、逆に困ったところなどはありますか?
甘えん坊なところ! 家ではお姉ちゃんの前で甘えてる姿を見せたくないのか見せません。抱っこしてあげようとすると「よせやい!」みたいにして、ノドの鳴る音さえ出さないように飲み込もうとします。でも他の場所に隠れてこっそり鳴らしていたり(笑)。
お店では皆を喜ばせようとして色々なことをしてくれるのが可愛らしい。
Q.お気に入りのオモチャや場所などはありますか?
ネズミのオモチャは好きで、くわえてきて人間のそばへ置きアピールしてきます。
銀ちゃんのお気に入りと同じ3つの場所と、最近は店奥のショーケース2段目に入るのもお気に入りです。
Q.すずのすけ君は「ギャラリー・エフ」にとってどんな存在ですか?
銀ちゃんがいた頃は銀ちゃん(銀次親分)を上に見る位置にいて、自分は子分としていましたが、すずの場合は皆で育てて、その成長を見て楽しんで人と結び付けてくれる、そして別れから励ましてくれ立ち上がらせてくれた存在。どの猫にも愛されて生きて欲しいと思いますし、その象徴みたいな存在になっています。
読者の方に伝えたいことがありましたら是非お聞かせ下さい。
まだ行き先がなく家族を待っている猫たちに、目を向けてくれるきっかけになってくれればと思います。シェルターから引き取られどんな人たちが繋がっていき、家族にまでなっていくのか、それは愛情で繋がり合っているのが見えると思うので、もっとそのようになっていって欲しいです。
ご家族で営むアットホームなお店の雰囲気の中、愛嬌いっぱいの看板猫・すずのすけ君は人と触れ合うのが本当に楽しそうで、見ている方もついつい笑みがこぼれます。
そして丁寧な受け答えと常に周囲への気配りを忘れないIzumiさんは、猫を通して生まれた人の縁を大切に育み、貴重な江戸建築の蔵であるギャラリーを活かして催されるイベントを通じ、より大きな人の輪へと広げていく努力を惜しまない素敵な方でした。そんなIzumiさんとすずのすけ君だからこそ出会うべくして出会い、人と時を繋いでいくこの場所で共に過ごしていることがとても自然に感じられた取材となりました。
ギャラリー・エフ
〒111-0034
東京都台東区雷門2-19-18
カフェ 11:00~18:00
火曜日/定休日(ほか臨時クローズあり)
バー 18:00~24:30(水・金・土のみ営業、水曜は23:00まで)
ホームページ⇒http://www.gallery-ef.com/
blog⇒http://ginji1124.exblog.jp/
twitter⇒https://twitter.com/iz_gin?lang=ja