画人文人 よんじょう
南仏コートダジュール在住の日本人。藍の万年筆で描かれる独自の絵は不思議な魅力を放つ。個展で展示される100点ほどの絵はほぼ完売。アメブロのヨーロッパ部門で有名なブロガーでもある。
<南仏ネコ絵巻>ではフランスのネコにまつわるグッズやよもやま話をイラストとともに紹介します。
「フランス絵巻」

あけましておめでとうございます! 2018年は戌年ですね。
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フランスは西洋占星術(十二星座)のお国ゆえ、干支の概念はありませんが、“中国式占星術”(Astrologie chinoise)というのが存在しとります。いわゆる、“十二支占い”ですね。

といっても、仏人の日常会話で、「俺、戌年。」とか、「ウチの犬も、戌年生まれなの~」といったフレーズは、出てきませんよ。自分の干支を知っている仏人は稀なのです。

フツーの仏人会話に出てくるのは、「俺、獅子座。私、魚座。」の十二星座。日本人がよく言う「俺って、B型~。」に相応するのが、仏人にとっては星占いで、老若男女問わず、自分の星座を誇らしく思っています。

さて。
“中国式占星術”は、仏国に移住している中国人(移民)が、自分のために、本国のやり方を導入したんでしょうね(私見)。
日本人が<白い飯と醤油が無いと、飯食った気がしねえ>のと同様、仏人が中国人に<アナタは牡羊座だから++>と解説したところで、豆板醤入ってない麻婆豆腐、ですもんね。

フランスに導入されている十二支は、日本のソレと違う点が2つあります。

1つめ:春節が元旦になる為、日本と時期がズレている。
たとえば、昭和45年の戌年の例でいうと、1月1日~12月31日生まれが戌年になるのはなく、その年の春節(昭和45年の場合だと)2月6日~昭和46年1月26日生まれ迄が戌年とされています。
ちなみに、今年2018年の戌年は、2月16日~2019年2月4日迄に生まれてくる人、ということになります。

2つめ:十二支の動物が違う!
日本式は、鼠、牛、虎、兎、龍、蛇、馬、羊、猿、鶏、犬、猪ですが、フランスの干支では、羊が“ヤギ”になっていて、猪は“豚“にされています。

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まあ、お寿司なんかでも、西洋に導入された途端、西洋人のベロに合うよう変容しますんで、干支もそういうものなのかもしれません。
この変容型(=ブタ投入型)のほうが、アジア諸国では、むしろポピュラーだそうです。

ところで、
干支に、なぜネコがいないのか?(やっと“ネコ”登場!)
の逸話はたいへん有名ですので割愛しますが(ガクっ)、
十二支の中に“ネコ”がいる国もある!というお話をココに書いておきます。

まず、フランスに導入された十二支にも、猫年が存在する流派(?)があります。そこには、兎年がなくて、兎の代わりにネコ(猫年)になっています。

主に、チベット、タイ、ベトナム、ベラルーシの十二支には猫年があるそうです。

そのほか、ブルガリアでは、虎年がなくて、虎の代わりがネコ(猫年)。

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虎はネコ科なんで、そのほうがシックリきますかね。

ネコは、兎のように可憐でしなやかな一面と、虎のように獰猛な一面をもちあわせてますんで、ネコならでのヘンゲ。まさしく”ネコだまし“ですね。

ところで、干支由来の言葉に、犬猿の仲、というのがあります。
仏国では、仲が悪い関係、相容れない間柄のことは、“犬と猿”ではなく、“犬とネコ”(“comme chien et chat”)と表現されます。

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実際には、ネコと犬が家の中で一緒に飼われ、つつがなく暮らしているケースはゴマンとありますけどね。

むしろ、ネコとネコ同士のほうが(組み合わせによっては)折り合いが悪く、一触即発の紛争劇がありがちですよね。

そもそも、ネコは譲歩したようにみえても、犬のようにノンキな協調ではなく、心の中にわだかまりを持ってる系もいますからね。
仏語の表現も、“comme chat et chat”(ネコとネコ)にしたほうが正しいんじゃなかろーか?

ネコは自分の好き嫌いが極めてハッキリしています。
愛くるしい顔で、ダメなものはダメにゃっ!というピシャリとした態度に、結局、人間のほうがエヘラエヘラとネコの命令下に敷かれます。

日本人で、自分のことを<ネコ的性格>と言う人がおりますが、日本VS仏国の人種間でみますと、日本人は犬的、仏人がネコ的です。

たとえば、日本人にも仏人にも、当然、犬嫌い、ネコ嫌い、コドモ嫌い、がおります。
日本人の場合はネコ嫌いがバレないように、「ニャンコ、カワイ~」などと言います。コドモが大嫌いでも、ママ友の、ちっとも可愛くないコドモに、おべっかを言います。フランスでは、犬嫌い、ネコ嫌い、コドモ大嫌い、をカミングアウトしても、何ら支障ありません。

誰かが何かを大嫌いであろうが、誰と誰が不倫しようが、それは“ワタシの問題ではナイ”からです。痛くも痒くないことなのです。

日本人は、多数派に同調するDNAなんで、自由奔放な発言に抵抗を覚える人が多いですね。
やりたいことをやってない人ほど、他人の生き方にイチャモンをつけたがります。

皆と協調することは、和をもって尊しの精神である反面、裏を返せば、自分が不利にならずに済む保身術でもあります。

今は、もう、そういう生き方は時代遅れになってきております。世間の基準に自分を合わせるのではなく、自分のことは自分が評価する時代です。

世間に対して正しい人でいるのではなく、個人個人が、自分にとってホントーの幸福を徹底して掘り下げていく時代なのであります。

好きか嫌いはハッキリ認識して、敵を恐れず、自分の意思にあわないものには迎合しないネコ型人間にこそ、発展がもたらされることでしょう。

戌年もネコの如く生きてみてはいかがかニャ? 良いお年を。

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